大きな絵と小さな音楽

絵,音楽,ことば

人類はほろび 雑草の天下となった 勝ち誇って天に伸びる草々 先はとんがっている

ホテルのラウンジの音楽 どんどん響く 聴いていると気分が上がるのはなんでだろう パッションフルーツというものを頼んでみる

入試期間は こちらも疲労こんばい そういうときは レコードに針を落とす 使える溝 使えない溝 ぐるぐると♪「いかれたBABY」Fishmans

雨のあとは 大量の虫が 大気を舞う

大きな絵 実際の大きさよりも 大きく描くのが とくに 愉しい こと に 気づいた

すべては天候のせいだとうことにしておく 梔子

朝は暑く 夜は寒い 一日の時間の中に 一年が折り畳まれたよう

空から大量の水が落ちてくる 滝のようだ

水 酸素 光 音楽 食事 会話 生きていくのに必要なもの

大都会の真ん中に一人 暖かい雨がふりそそぐ皮膚が張り詰め 身構え 空を仰ぐ 息を吐き出す

どんな風に友達をつくるのであろうか? 忘れてしまった太陽が暖かい

早朝起きて上京 母校にて講義 講義後 いくつかの質問のメールをいただく太陽が眩しい

ずっと歩いていくと いつか 地面が終わり そこから 宇宙が 始まる宇宙には 重力がないので 上も 下もない 当然 上座もない 重力がなくなると 人間の身分もなくなる

夢の中で ときどき 足が遅くなる なぜだろう

ラジオだと話し手の距離が近いのはなぜだろう 電波を介することで より近くなる

街を歩く 垂直に落ちてくる陽光

雪で鞄が真っ白になった

首が重たい 何か乗っているのかもう二月なのに まだ雪が ふっている

雨が冷たい 電線が空を切り裂く 網膜が乾く

フィールドワーク 太陽が暖かい

机を動かし 窓の側へ 卓上から外の景色へ なめらかに接続される 陽光がペンに影を落とす 肩の上を雲が流れる

スローモーション 空に鳥がいない

手足が凍る 濡れた手袋は使いものにならない 金属に霜が張り付く

大きな鳥が眼前を駆け上る なんて細い足だろう 驚く間もなく 山向こうへ消える

不思議な本を読んだ 戦場で顔に怪我を負ったフランス人が 仮面を被る話 ピエール・ルメートル「天国でまた会おう」 枯れかけた植物が 最後の葉一枚を かかげる

ラボの本棚を拡張すべくホームセンターへ なんだか 休日のようだ

絵を描いたら 写真を撮る それは もう 筆を入れる度に撮る ちゃんとよくなっているか 確かめるために よくなっていない場合に 巻き戻るためにただ ときどき 写真の中の絵が 実際の絵とずいぶん違うナ と感じる時があるのだ 写真の方が立派な時もあれば 実際…

歯医者 水がキリキリと鳴る この音の高さ 医療費を払うと サイフが随分と軽くなった 気分も軽くなる

舌を咬んだ 血の味がする雪を踏みしめる 真新しい雪の白さ 踏みつけられた雪の複雑さ

朝から雪が降っている 鳥が空高く飛んでいる 本を積み上げていく